Whole Earth Catalog ④
ホール・アース・カタログが定期的に発行されていたのは、1968年から1971年の3年間ほどなのですが、ホール・アース・カタログの出現は、当時のアメリカの出版界だけでなく、日本の出版界にも大きな影響を及ぼしたといわれています。
アメリカでは、『Whole ○○○ Catalog』や、『○○○ Catalog』といったホール・アース・カタログのフォーマットそっくりのカタログが多数出版され、ちょっとしたカタログ・ブームが起きたようです。

The New Earth Catalog, 1973年

New Woman's Survival Catalog, 1973年

The Whole Sex Catalogue, 1975年

Whole House Catalog, 1976年

The Alaska Catalog, 1977年

WHOLE BOATING CATALOG, 1979年
日本ではどうだったのでしょうか。当時の日本にとってアメリカはとても遠い存在の国でした。そんな中で、ホール・アース・カタログを通して知るアメリカに衝撃を受けた雑誌の編集者たちは、それに感化された雑誌や、日本版のホール・アース・カタログともいえる雑誌などを次々と出版し、雑誌を通して、読者にアメリカ文化を伝えました。それら雑誌は、今となっては古書店で高額取引される貴重な雑誌になっています。
『オブジェクトマガジン 遊』
1971年に創刊された、編集長・松岡正剛、表紙デザイン・杉浦康平の黄金コンビによる雑誌。ホール・アース・カタログの影響を受けて誕生したことを公言しており、誌面に科学や、芸術といったあらゆる分野の知を詰め込んでいる。この『遊』の誕生も、当時の日本の出版界に衝撃を与えたいわれている。

オブジェクトマガジン 遊(創刊号), 1971年
『Made in U.S.A catalog 1975』
雑誌『POPEYE』の創刊メンバーによって出版。アメリカ製品を通して当時のアメリカを紹介したカタログ形式の雑誌。情報量では、ホール・アース・カタログに勝るとも劣らない。翌年発行された『Made in U.S.A -2』では、ホール・アース・カタログの編集部が運営する《Whole Earth Truck Store》を数ページにわたり取材している。『POPEYE』の前身雑誌である。

Made in U.S.A catalog 1975, 1975年
『宝島・全都市カタログ』
月刊誌・宝島の企画で誕生した『全都市カタログ - First Whole City Catalog』。ホール・アース・カタログのフォーマットを使い、本家と同様に、知識や思想の紹介に重きを置いている。日本版のホール・アース・カタログといえる一冊。長い宝島の歴史のなかでも、よく売れた号だとか。

宝島 11 全都市カタログ, 1975年

別冊宝島 保存版・全都市カタログ, 1976年
『U.S.A.'76 DO CATALOG』
週刊サンケイの特別増刊として発行された『DO CATALOG』。『Made in U.S.A catalog』とは対照的に、アメリカ人の生活を通してアメリカ文化を紹介している。巻末では、ホール・アース・カタログの発案者、スチュアート・ブランドのインタビュー記事を掲載している。『宝島・全都市カタログ』を編集した北山耕平氏も推薦している雑誌である。

このように、ホール・アース・カタログは、当時の日本の出版界に大きな影響を及ぼしました。ホール・アース・カタログの影響を受けてつくられた雑誌にもまた影響力があり、その後に発行された雑誌の手本になったともいわれています。
じつは、CATALOG & BOOKsも、偉大な編集者の方がたに続き、現代版のホール・アース・カタログ、もしくはホール・アース・カタログの思想にインスパイアされたメディアをつくることができないかと密かに考えています。いつの話になるかわかりませんが、いずれ実現できればいいなと思っています。