Beyond Habitat

《Beyond Habitat, Moshe Safdie, 1970》
この本の著者であるモシェ・サフディは、建築の世界ではとても有名な建築家です。世間ではあまり知られていない存在かもしれませんが、今ではシンガポールのランドマークになった『マリーナ・ベイ・サンズ』を設計した人物といえば、ご存じの方もいるのではないでしょうか。
そのサフディの初プロジェクトで、しかも代表作といわれている建築が、この本のテーマである「Habitat 67」です。「Habitat 67」は、1967年のモントリオール万博にあわせて建設され、万博の主要なパビリオンとなりました。その後は、集合住宅として利用されており、今なお入居希望者が後を絶たず、高額で取引されています。
どのような思想をもとに「Habitat 67」が設計されたのかを知る一冊になっています。
以下、ラスト・ホール・アース・カタログの88ページに掲載されている、スチュアート・ブランド による書評です。
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私たちは、バックミンスター・フラー、パオロ・ソレリ、クリストファー・アレグザンダーを支持してきた。そして、モシェ・サフディの処女作となるこの本である。サフディの初プロジェクト「Habitat(アビタ)」は、1967年のモントリオール万博の主要なアトラクションであり、通常は成功するためには数十年かかる分野において、彼を天才少年として世間に認めさせたものであった。この本における彼のアイディア「high-rise village life(高層都市)」は興味深いのだが、もっと重要なことは、独創的な素晴らしいアイディアを裏切り、デザイナーを黙らせて、プロジェクトを構想する政治的、経済的圧力についての彼の記述である。
(大きなプロジェクトに関する見通しを一層明らかにするためには、アルベルト・シュペーアの『Inside the Third Reich(第三帝国の内幕)』を読むとよい。彼はヒトラーの建築家だった。彼は挫折した建築家だったと私は考えていたのだが、のちに彼は成功した建築家だったことが判明した。)
サンフランシスコ州立大学のサフディの学友会が、生徒たちによって始動していたし、資金提供を受けていた。しかし、アビタはバカな管理者たちによって停止されてしまった。
[書評:Stewart Brand]

《The Last Whole Earth Catalog, pp.88, 1971》